１９９５年２月２２日、練馬区立光が丘図書館が開館してもうすぐ十年目を迎えます。同時に、１９９５年５月２０日に「利用者の会」が発足して十年の月日が流れようとして、「十年一昔」といいますが、今では三年でも大きく世の中が変わってしまいます。そんな時代に図書館ができて何が変わったのか、利用する人それぞれに違っていると思いますが、自分はどうだったのか、ふりかえると浮かんでくるものは、「図書館がそこにある」ということです。

光が丘公園ができて、光が丘団地が建ち並び、私自身も入居してから二十年になります。そこで二十年という詩を一つ。

二十年　　　　　　　　　月岡一治

近くにいすぎて

見えにくいものがある

鏡のまえにならんだ

おまえを見ていたら

しっかりと老けていて・・・

気の毒で

そっと言うと

あなただけ年取らせたら

かわいそうだからって

僕たちの二十年

鏡の前から

街へ買い物に出かけていく

日曜日の少し遅い朝の

二人の二十年

それぞれの二十年に乾杯です。

もう一つかわいくて、未来にはばたくことの応援歌のような、詩をどうぞ。

　　　　　　　ほじょなし　　　　　　　鈴木義雄

　　　　　　　わたし

　　　　　　　きょうから

　　　　　　　ほじょなしなの!

              五歳のみおちゃんは

　　　　　　　ふらつきながら

　　　　　　　ペタルをこいで

　　　　　　　角を曲がった

　　　　　　　その角の向こうに

　　　　　　　見えない幾百幾千の

　　　　　　　曲がり角が待っている

　　　　　　　みおちゃん

　　　　　　　きょうは

　　　　　　　ほじょなし人生の

　　　　　　　初こぎの日だねえ

　　　　　　「朝の詩1998-2002」父、母、わたしをまもってくれるもの

　　　　　　　　　　　　　　　新川和江編　幻冬舎刊　２００３年

　以前、利用者の会の仲間、Hさんの家を訪ねた折り、奥様がベランダからのながめを、とても気に入っているから見て欲しいと言われ、はじめてお伺いするというのに、図々しくベランダへ。最初は小さな木の植え込みが、今ではうっそうとして「ヨーロッパの写真によく見るような森」の景色だと話されるのです。言われてみれば、木々が見事に連なって、どこかの国の森にも見えます。その夜の帰り道がとてもいい気分であったような、想像することの喜び、なんでもないことがすてきな出来事になりうるということ、それをしみじみと思いました。

本の世界も同じ、一冊の書物から、そして十冊、百冊、何万冊へとふくらんで、そこから、利用者にとって「本の森」となるわけで、ますます盛んに「人と情報が通い合う光が丘図書館」であって欲しいと願います。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　文責　兵頭恵子