二年位前から配架ボランティアを始めた。各戸の郵便ボックスに入っている＜週刊すまいる情報＞の掲載記事によってである。きっかけは図書館でのボランティアで本の整理方法を知りたいと思ったからである。少ない蔵書ではあるが私自身が本の整理に困っていたのである。

　ところで私は恥ずかしい事にボランティアをするまで配架という言葉を知らなかった。図書館中央モールの所々に置かれている本が積まれた台車さえ、何のために通路の真中に、とは思ったもののそれまでであった。本の区分、分類別に、返却されて来た本を職員たちがより効率的に配架し易いように置かれてあるらしいと知ったのはボランティアするようになってからである。私の配架への貧しい知識はそこまでである。

　私は月に二回、一時間ずつそれら返却本を区分に従って書架に並べ戻す配架ボランティアをしている。
　ボランティアを始めてすぐに、私は最初の個人的意図、期待が裏切られる事を知る。今は「待て暫し、我に５分の時を与えよ」の心境で雑然と散らばっている我が家の本を眺めている。けれども配架は楽しい。ボランティアといってもまだ初心者だがそれでも配架を通していろんな本たちに沢山出会った。出会っている。時代が、現代が本から垣間見える。書架に並んだ本たちがいのちを持って暖かく語りかけてくる。いつかあの本は必ず読もうと思う本にも行きずりのように出会う。

　ボランティアを始めてから一年目位目に、私はこの光が丘図書館でとてもよい体験をした。私はある本を、＜図像＞を「図象」と思い込んで探していた。相談コーナーで若い女性職員が一所懸命調べてくれ、やがて、図像では、と美術書一冊と図像学に関する初歩と専門書の二、三冊を持って来てくれたのである。その時の彼女の誠実さと対応は今も忘れ難い。同じ図像に関してだがもう一つ、思いがけない感動と感謝があった。彼女の持って来た本の一冊とその著者との出会い（紙上での）である。本への再認識である。その著者名は配架ボランティアを通して知っていた。図像とは何か、という一例としてグリコ（飴）の創始者の意図、商標の中で時代を映して微妙に変わって行く変遷の解説が分かり易い文章で書かれていた。読んで、私の中で一挙に開けてゆくものがあった。好き嫌い、好みを超えての出合いであった。その一冊の本によって、書架に並んでいる他の一冊一冊、全書に対する思いが変わったといって良い。一冊の本によって深く教えられたのである。

　図書館とは私にとって利用者、ボランティア両面からアラビヤンナイトの「開け、ゴマ！」のアリババのように、入って、見て、目を輝かせる事が出来る所でもある。　
（Ｓ．Ｅ．）