「レファレンスの底ぢから」　　　　　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　光が丘図書館　　田中朋子

数年前の職場日帰り旅行。バスガイドさんがクイズを出したときに、「図書館の人は物知りだから」と言いました。それは、限りなく嘘です。世の中の森羅万象を、知っているわけありません。知らないんですけど。

新聞記者が人脈を駆使するように、図書館員は人脈ならぬ「書脈」を持っています。インターネットですべてがわかる、なんて思っちゃあ、損ですよ。

　それでは、実例をご紹介しましょう。

その１　小林純一「ひとりとおおぜい」を読みたい。

インターネットの「東京都の図書館　横断検索」で、やっと１冊見つかる程度。「児童文学者」というヒントを得て書棚に走り、出してきた本は・・・『児童文学全集・内容綜覧作品名綜覧（日外アソシエーツ）』。その作品がどの本に収録されているのかが、わかります。幸い『日本幼年童話全集７』にあると判明して、都立中央図書館から借り受けました。

このように、調べものに使う本をレファレンストゥール（参考図書）と呼び、練馬区では赤枠のラベルがついています。

その２　資料を探すとき、書名の一部を手がかりにして検索をする方は多いと思います。非常に便利です。でも、題名にその言葉が入ってなかったら、拾えません。例えば、「顔についての本」。顔の造りなのか、表情のことなのか、検索に困ります。

そこで出てくるのが、奥の手「件名」。業務用端末では調べることができます。本の内容をある一定の言葉で表したもので、「顔」ならば「人相」という言葉で、まとめられています。利用者用検索機（ＯＰＡＣ）の項目にある分類番号は、数字やカナなどの記号で表されたものです。

その３　マスコミの影響力は、かなり大きいです。先日の芥川賞・直木賞発表後には、受賞作に予約が分単位で入っていました。コーヒーのＣＭで流れていた曲を探しに来た方に、カウンターで歌い出され、平井堅ではなくベット・ミドラー『ローズ』ではと、禁じ手ながら個人の知識で答えてしまったこと。同じく詩『朝のリレー』谷川俊太郎の、ほかの作品を探したこと。「小泉の孫」とお年寄りに尋ねられ、時期的なこともあって首相官邸を考えつつ、実は大泉逸郎の『孫』だった、というのも、本当にあった話です。

残念ながら答えに至らなくても、手ぶらで帰ることのないよう、せめて粗品（ヒント、糸口）くらいは差し上げたいと思っています。そのためには、知りたい内容を率直に言ってください。時間もあると助かります。どうか遠慮なさらずに。皆様の好奇心が、図書館を育てるのです。